ROE・ROA・ROICの違いと使い分け|資本効率を測る3指標を整理
2026/5/27 — 8分で読めます
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目次
企業分析を進めると必ず登場するのが、ROE・ROA・ROICという3つの指標です。どれも「資本効率」を測るものですが、分母に何を置くかでまったく違う視点になります。「ROEは高いのにROAは低い」「ROICだけ見れば十分?」と混乱しがちなこの3指標を、本記事では分母の違いから整理し、業種別の使い分けまで一気に把握できるようにまとめます。NISAで長期投資をする個人投資家が、銘柄分析で迷わないための実践的な視点をお届けします。
ROE・ROA・ROICの定義と計算式を一覧整理
まずは3指標の定義と計算式を一覧で確認しましょう。「分母に何を置くか」「どの視点の効率を測るか」を見比べることで、それぞれの役割がはっきりします。
指標 | 正式名称 | 計算式 | 視点 |
|---|---|---|---|
ROE | 自己資本利益率 | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 株主から見た効率 |
ROA | 総資産利益率 | 当期純利益 ÷ 総資産 × 100 | 会社全体の効率 |
ROIC | 投下資本利益率 | 税引後営業利益(NOPAT) ÷ 投下資本 | 事業に投下した資本の効率 |
分子と分母を整理すると次のようになります。
- ROE: 株主のお金(自己資本)を使ってどれだけ純利益を稼いだか
- ROA: 会社の全資産(自己資本+負債)を使ってどれだけ純利益を稼いだか
- ROIC: 事業に投下した資本(有利子負債+自己資本)で、税引後の本業利益をどれだけ稼いだか
計算式の詳細や活用方法は、それぞれの個別記事でも解説しています。あわせてROEとは何かの解説記事、ROAとは何かの解説記事、ROICとは何かの解説記事もご参照ください。
3指標の違いを「分母の違い」で理解する
3指標を混同しないコツは、分母を見比べることです。分母が変わると、見ている「効率」の意味も変わります。
分母の構造を図で整理
指標 | 分母の中身 | 含まれるもの |
|---|---|---|
ROE | 自己資本 | 株主資本のみ |
ROA | 総資産 | 自己資本+すべての負債(買掛金・未払金など含む) |
ROIC | 投下資本 | 自己資本+有利子負債(借入金・社債など)のみ |
たとえば、自己資本100億円、有利子負債100億円、当期純利益10億円(税引後営業利益も10億円と仮定)、その他の負債(買掛金など)が50億円の企業があるとします。総資産は250億円です。このときの3指標は次のようになります。
- ROE = 10億円 ÷ 100億円 = 10%
- ROA = 10億円 ÷ 250億円 = 4%
- ROIC = 10億円 ÷ 200億円 = 5%
同じ会社でも、見る視点によってこれだけ数値が変わります。ROEは株主視点、ROAは資産全体の視点、ROICは事業に必要な資本だけを切り出した視点。つまり「どこから見た効率なのか」を意識することが、3指標の使い分けの第一歩です。
負債と利益の扱いの違い
もう一つ重要な違いが、利益の取り方です。
- ROE・ROAは分子に当期純利益を使うため、特別損益や支払利息・受取利息の影響を受けます
- ROICは分子に税引後営業利益(NOPAT)を使うため、本業の儲ける力だけを見られます
NOPATは「Net Operating Profit After Tax」の略で、営業利益から実効税率分の税金を差し引いた数値です。本業の収益力を、利息や特別損益の影響を除いて評価できる点がROICの強みです。営業利益と経常利益の違いについては営業利益と経常利益の違いの解説記事もご参照ください。
それぞれの指標が向いている場面
3指標は優劣ではなく、目的によって使い分けるものです。
ROEが向いている場面
株主目線で「自分の出資金がどれだけ働いているか」を測りたいときに最適です。配当や株主還元を重視する投資家、自己資本のリターンを重視する場面で使われます。一般に8%以上が一つの目安とされますが、業種により大きく異なります。
ROAが向いている場面
資産全体の効率を測りたいときに有効です。会社が抱える資産すべて(在庫、設備、現金、借入で買った機械など)を使って、どれだけ稼げているかを見られます。設備や在庫の多い業種で、資産が遊んでいないかをチェックするのに役立ちます。一般に5%以上が目安と言われますが、業種差が大きい点に注意が必要です。
ROICが向いている場面
本業の収益力を、資本構成(借入が多いか少ないか)の影響を除いて比較したいときに最適です。同業他社と比較する際や、複数事業を持つ企業の事業ポートフォリオを評価する際に有効です。ROICがWACC(加重平均資本コスト:株主と債権者が期待するリターンの平均)を上回っていれば、企業価値を生み出している状態と判断されます。