ROICとは?投下資本利益率の計算方法とROEとの違い
2026/5/15 — 10分で読めます
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目次
「最近よく耳にするROICって何?ROEと何が違うの?」と感じたことはありませんか。ROIC(投下資本利益率)とは、企業が事業のために投じた資本(株主資本+有利子負債)から、どれだけ効率よく利益を生み出したかを示す指標です。
ROICは、東京証券取引所が「資本コストを意識した経営」を上場企業に求めるなかで、近年とくに注目度が高まっています。長期投資で企業の真の実力を見極めたい方にとって、必ず押さえておきたい指標です。
この記事では、ROICの計算方法から、ROE・ROAとの違い、WACCとの関係、業種別の目安、注意点までを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
ROIC(投下資本利益率)とは?基本の意味
ROICは「Return On Invested Capital」の略で、日本語では投下資本利益率と呼ばれます。事業に使われている資本(株主のお金+借入金)に対して、どれだけ効率よく利益を生み出したかを測る指標です。
たとえば、事業に200億円の資本を投じている会社が、税引後営業利益で20億円を稼いでいれば、ROICは10%です。同じ規模の資本で30億円稼ぐ会社があれば、ROICは15%となり、より効率的に資本を活用していると評価できます。
ROICが高い企業ほど、「投じた資本を上手に利益に変換できる、収益力の高い企業」と判断されます。
なぜROICが注目されているのか
長年、日本では収益性指標としてROE(自己資本利益率)が重視されてきました。しかしROEには、後ほど解説するように「借入を増やすだけで数値が高く見えてしまう」という弱点があります。
ROICは事業に使われた資本全体で評価するため、財務戦略の影響を受けにくく、企業の本業の実力をより公平に映し出せる点が評価されています。
ROICの計算方法と求め方
ここでは、ROICの計算式と具体例を見ていきましょう。
基本の計算式
ROICは以下の式で計算します。
ROIC(%)= 税引後営業利益(NOPAT) ÷ 投下資本 × 100
- 税引後営業利益(NOPAT):本業で稼いだ営業利益から、法人税相当額を差し引いた利益。「Net Operating Profit After Tax」の略
- 投下資本:株主資本(自己資本)+ 有利子負債。事業に投じられているお金の合計
NOPATは具体的には「営業利益 ×(1 − 実効税率)」で算出します。実効税率を30%とすると、営業利益が100億円なら NOPAT は 100億円 ×(1 − 0.3)= 70億円になります。
具体例で計算してみよう
仮に以下のような企業があったとします。
- 営業利益:100億円
- 実効税率:30%
- 株主資本:500億円
- 有利子負債:300億円
これをROICの式に当てはめると次のようになります。
- NOPAT=100億円 ×(1 − 0.3)= 70億円
- 投下資本=500億円 + 300億円= 800億円
- ROIC=70億円 ÷ 800億円 × 100=8.75%
つまりこの企業は、事業に投じた800億円から年8.75%の利益を生み出している、と読み取れます。
投下資本の数値はどこから取る?
計算に使うNOPATと投下資本は、決算短信や有価証券報告書の損益計算書・貸借対照表から取得できます。決算書の読み方を解説した記事もあわせて読むと、数値の出所をスムーズに理解できます。
ROICとROE・ROAの違い
ROIC・ROE・ROAは、いずれも「資本効率を示す収益性指標」ですが、見ている対象が異なります。
ROEとの違い:借入による「水増し」を受けない
ROE(自己資本利益率)は、株主から預かった資本(自己資本)に対して、どれだけ最終利益を出したかを示す指標です。計算式は「当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」です。
ROEには弱点があります。それは、借入を増やすだけで数値が高く見えてしまうことです。たとえば、自社株買いで自己資本を減らしたり、借入を増やして自社株買いを行うと、ROEは見かけ上アップします。自社株買いの影響についてもあわせて理解しておくとよいでしょう。
一方のROICは、分母に「株主資本+有利子負債」を使うため、借入を増やしても投下資本が増えるだけで、数値が一方的に高くはなりません。本業で生み出した利益の「純粋な効率」を見られる点がROICの強みです。
ROAとの違い:「事業に使われた資本」に絞っている
ROA(総資産利益率)は、企業の総資産に対する利益率を示す指標で、計算式は「当期純利益 ÷ 総資産 × 100」です。
ROAは「総資産」を分母にするため、事業に直接使われていない資産(遊休資産や余剰現金など)も含まれてしまいます。一方ROICは、投下資本(事業に投じられているお金)に絞るため、本業の効率をより精緻に評価できます。
3つの指標の使い分け
- ROE:株主から見た投資効率(株主目線)
- ROA:会社全体の資産活用効率(経営目線・全体像)
- ROIC:本業に投じた資本の収益力(事業目線・実力)
3つを組み合わせて見ると、企業の収益構造を多面的に理解できます。
ROIC > WACCが「価値創造」の条件
ROICを語るうえで欠かせないのがWACC(加重平均資本コスト)との比較です。
WACCとは何か
WACC(Weighted Average Cost of Capital)は、企業が資金を調達するときにかかる平均的なコストです。株主資本コスト(株主が期待するリターン)と負債コスト(借入金利)を、それぞれの構成比に応じて加重平均して計算します。
たとえば、株主が年8%のリターンを期待し、借入金利が3%、株主資本:有利子負債=6:4の企業なら、WACCはおおよそ「8%×0.6 + 3%×0.4=6.0%」程度になります(実際は税効果の調整が入ります)。
ROIC > WACCで企業価値が生まれる
ここがポイントです。
- ROIC > WACC → 価値創造(資本コストを上回るリターンを生んでいる)
- ROIC
つまり、ROICが10%でも、WACCが12%ならその企業は資本コストを下回っており、株主や債権者から見ると「お金を預けるリターンが見合っていない」状態です。逆にROICが8%でWACCが5%なら、しっかりと価値を生み出しているといえます。
ROICを単独で見るのではなく、WACCと比較してギャップを評価することが、企業の本当の実力を測るカギになります。