BPS(1株あたり純資産)とは?計算方法とPBRとの関係を解説
2026/5/2 — 8分で読めます
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目次
「PBRが1倍割れだから割安」。投資の記事でよく見かける表現ですが、このPBRの計算に使われているBPS(1株あたり純資産)を正しく理解していますか?
BPSは、企業の財務的な「底力」を測る基本指標です。NISAで個別株投資を始めた方にとって、BPSを知ることは企業の安全性を見極める第一歩になります。
この記事では、BPSの意味・計算方法から、PBRとの関係、実際の企業分析での使い方まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
BPS(1株あたり純資産)とは?
BPSの意味と正式名称
BPSとは「Book-value Per Share」の略で、日本語では「1株あたり純資産」と呼ばれます。
企業が持つ純資産(総資産から負債を差し引いた金額)を、発行済株式数で割った値です。つまり、「1株に対してどれだけの純資産が裏付けとしてあるか」を示しています。
たとえば、純資産が1,000億円で発行済株式数が1億株の会社であれば、BPSは1,000円です。この1,000円が、1株あたりの「資産の裏付け」となります。
「解散価値」とも呼ばれる理由
BPSは「解散価値」とも呼ばれます。これは、会社が事業を全てやめて解散した場合、資産を売却して負債を返済した残りが株主に分配されることに由来します。
具体的には、以下のイメージです。
- 会社の全資産を売却する
- 借入金などの負債をすべて返済する
- 残った金額(=純資産)を株主に分配する
- 1株あたりの受取額がBPSに相当する
ただし、実際の解散時に帳簿どおりの価格で売却できるとは限りません。BPSはあくまで「理論上の解散価値」です。
BPSの計算方法
計算式と具体例
BPSの計算式はシンプルです。
BPS(円)= 純資産 ÷ 発行済株式数
具体例で見てみましょう。トヨタ自動車(7203)の2025年3月期のデータを使います。
- 親会社所有者帰属持分(純資産):約35.9兆円
- 発行済株式数(自己株式を除く):約130.5億株
- BPS:約2,753円
つまり、トヨタ株を1株持っている場合、帳簿上は約2,753円分の純資産が裏付けとしてあるということです。
KabuWiseのトヨタ自動車のAI分析レポートでは、こうした財務データをもとにした分析を確認できます。
BPSが変動する3つの要因
BPSは一定ではなく、以下の要因で変動します。
1. 利益の蓄積(BPSが上がる要因)
企業が利益を出すと、その一部が内部留保(利益剰余金)として純資産に加わります。毎年安定して利益を出している企業は、BPSが年々増加していく傾向にあります。
2. 配当金の支払い(BPSが下がる要因)
配当金は純資産から株主に支払われるお金です。高い配当を出すほど純資産が減少し、BPSは下がります。
3. 自社株買い(BPSが上がる要因)
自社株買いとは、企業が市場から自社の株式を買い戻すことです。発行済株式数が減るため、1株あたりの純資産であるBPSは上昇します。
BPSとPBRの関係
PBR=株価÷BPS
BPSを理解する最大のメリットは、PBR(株価純資産倍率)が読めるようになることです。PBRは以下の計算式で求められます。
PBR(倍)= 株価 ÷ BPS
たとえば、BPSが2,000円の企業の株価が3,000円なら、PBRは1.5倍です。これは「1株あたりの純資産の1.5倍の価格で株が取引されている」ことを意味します。
PBRの基本的な考え方は、以下のとおりです。
- PBR 1倍:株価と1株あたり純資産が同じ水準
- PBR 1倍未満:株価が解散価値を下回っている状態
- PBR 1倍超:市場が企業の将来性を評価している状態
PERとPBRの違いや使い分けについて詳しく知りたい方は、PERとPBRの違いとは?計算式・目安を初心者向けに解説もあわせてお読みください。
PBR1倍割れとBPSの関係
「PBR1倍割れ」とは、株価がBPSよりも低い状態を指します。理論上は「会社を解散したほうが株主にとって価値がある」状態です。
2023年に東京証券取引所がPBR1倍割れの企業に対して改善策の開示を要請したことで、大きな注目を集めました。
ただし、PBR1倍割れだからといって、必ず割安とは限りません。以下のような理由が考えられます。
- 将来の業績悪化が見込まれている
- 保有資産の実際の価値が帳簿価額より低い
- 収益力が低く、資本を有効活用できていない
PBR1倍割れの数字だけで判断するのではなく、その背景を分析することが大切です。
BPSを企業分析に活用する3つのポイント
BPSの推移で成長性を見る
BPSは「ある1年のスナップショット」として見るだけでは不十分です。過去数年間の推移を確認することで、企業の成長性が見えてきます。
たとえば、トヨタ自動車のBPSは2013年3月期時点では1,000円を下回る水準でしたが、利益の着実な積み上げによって2025年3月期には約2,753円まで成長しています(いずれも2021年10月の1:5株式分割を遡及調整後のベース)。毎年着実に利益を積み上げ、純資産を増やしてきた企業はこのようにBPSが右肩上がりに伸びていきます。
逆に、BPSが横ばいや減少傾向の企業は、利益が出ていないか、多額の配当や損失で純資産が減っている可能性があります。このような企業は、EPS(1株あたり利益)や営業キャッシュフローの推移もあわせて確認するとよいでしょう。
同業種で比較する
BPSの絶対値は業種によって大きく異なり、銘柄によって数百円から数万円まで幅があります。全体として以下のような傾向があります。
- BPSが高くなりやすい業種:製造業、不動産業、銀行業など(有形資産が多い)
- BPSが低くなりやすい業種:IT・ソフトウェア業、サービス業など(無形資産が中心)
たとえば、IT企業のBPSが500円で製造業のBPSが3,000円でも、IT企業のほうが劣っているとは限りません。ビジネスモデルの違いから生まれる差です。
BPSを比較する際は、必ず同じ業種の企業同士で行いましょう。KabuWiseなら業種や財務指標を含めた分析レポートで、BPSの水準感もまとめて確認できます。
EPSや自己資本比率と組み合わせる
BPSだけでは企業の全体像はつかめません。他の指標と組み合わせることで、より精度の高い分析ができます。
- EPS(1株あたり当期純利益):企業の「稼ぐ力」を示す指標。EPSが安定して高ければ、BPSの増加も期待できます
- 自己資本比率:総資産のうち純資産が占める割合。自己資本比率が高い企業はBPSが安定しやすい傾向にあります
- ROE(自己資本利益率):純資産を使ってどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。BPSが高くてもROEが低ければ、資本を有効活用できていない可能性があります
KabuWiseの任天堂のAI分析レポートのように、BPS・EPS・ROEなどの指標を総合的に確認すると、企業の全体像がつかみやすくなります。
BPSを見るときの注意点
業種によってBPSの水準は異なる
前述のとおり、BPSの水準は業種によって大きく異なります。「BPSが高い=良い企業」とは単純に言えません。
特にIT企業やスタートアップ企業は、ブランド力・技術力・人材といった無形資産が企業価値の大部分を占めます。これらは貸借対照表に計上されにくいため、BPSには反映されにくいのです。
BPSが低いからといって企業価値が低いわけではない点を覚えておきましょう。
簿価と時価のズレに注意
BPSの計算に使われる純資産は簿価(帳簿上の金額)です。しかし、実際の資産の市場価値(時価)とは異なることがあります。
たとえば、以下のようなケースです。
- 不動産:何十年も前に取得した土地が、帳簿上は購入価格のまま計上されている(実際の時価はもっと高い場合がある)
- 有価証券:保有している株式の時価が帳簿価額を大幅に上回っている、あるいは下回っている
- のれん:M&A(企業買収)で計上されたのれんが減損(価値の低下)する可能性がある
簿価ベースのBPSだけを見て「割安だ」と判断するのは危険です。資産の中身にも目を向けることが大切です。
まとめ|BPSを理解して企業の「底力」を見抜こう
この記事のポイントを整理します。
- BPS(1株あたり純資産)は、企業の純資産を発行済株式数で割った値
- 「解散価値」とも呼ばれ、1株あたりの資産の裏付けを示す
- PBR=株価÷BPSの関係があり、BPSを理解するとPBRの意味がわかる
- BPSの推移を見ることで、企業の成長性を判断できる
- 業種によるBPSの違いや、簿価と時価のズレには注意が必要
- EPS・自己資本比率・ROEなど他の指標と組み合わせることが大切
BPSは、企業の「稼ぐ力」ではなく「持っている力」を測る指標です。企業の財務的な安定性や成長の蓄積を見るうえで欠かせない基本指標ですので、ぜひ個別株分析に活用してみてください。
KabuWiseでは、BPSをはじめとする財務指標をもとに、AIが企業の分析レポートを自動生成しています。銘柄コードを入力するだけで、初心者の方でも読みやすいレポートを確認できます。
本記事は情報提供を目的としており、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。記事内のデータは執筆時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。